第8章

永人視点

スイスに到着してから、七日が過ぎた。東都からのプライベートジェットでのフライトは、まるで別世界に足を踏み入れたかのようだった——混沌とした憎悪の世界から、すべてが異なる速度で動く、この静謐なアルプスの施設へ。

窓の外には、純白のスイスの山々が、朝の光を浴びて厳かに広がっている。久しぶりに、復讐を計画したり、古い傷を抱え続けたりしていない自分がいた。ただここに座り、百合子の穏やかな呼吸を見つめ、感じ方をとうに忘れてしまっていた感情を、ただ静かに味わっている。

愛。本物で、必死で、恐ろしいほどの、愛。

「『君をいかに愛しているか? その方法を数えさせて……』」実家の彼女...

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